柏のバンディエラ 大谷秀和の視線の先にあったもの 。

クラブの重要な歴史の数々をピッチの上に刻み続けてきた“柏のバンディエラ”。 26年に渡り愛する柏の地で見つめていた視線の先にあったものは。

Profile
柏レイソル・コーチ(トップチーム)。中学のアカデミー時代から昨年末の現役引退まで26年間を移籍なく柏レイソルで過ごした真のバンディエラ。クラブ歴代最多のJ1通算384試合出場、2011年・クラブ初のJ1リーグ優勝、2011年Jリーグ優秀選手賞受賞。2022年をもって現役を引退。

Instagram:@hidekazu_7_otani
Twitter:hide_tani07

柏でアジアのチャンピオンになりたかった。

―昨年末に長い現役生活を終えられました。本当にお疲れ様でした。柏では何年プレーされたんですか?

大谷秀和:中学のアカデミーからなので26年間。柏一筋でしたね。

―凄い。率直に「移籍してみても良いかも」とか考えたこともありましたよね?

大谷秀和:無かったですね。柏は人も環境も良いし、慣れ合いの意味ではなく居心地が凄く良かった。地元も柏だったし。求められている間はずっと居ようと思ってましたね。入団してしばらくは残留争いとかが多かったんですけど、2011年に柏が初めてリーグ優勝出来て。

このクラブで良かった、って。当然その後も柏に居るもんだと思っていて。


―その2011年にはJリーグ優秀選手にも選ばれていますよね。普通に考えたら引く手あまたですよ。

大谷秀和:もう時間が経ってしまったのでハッキリと記憶はしていないんですけど。。。確かその頃は代理人を付けていなかったような気がします。お金のこととか殆ど気にしたことが無かったから。引退してから別のクラブの監督に「本当はうちのチームに引き抜きたかったのに」と言って頂けたりもしたんですけど。暗黙の了解で「大谷は柏から出ない」みたいになっていましたね、多分(笑)。あとは柏でアジアのチャンピオンになりたかった。移籍を考えたことがないのはそれが凄く大きいかもしれません。

―現役引退後もすぐに柏のコーチに就任。こうなるとサポーターの方々も含め皆が監督になることを期待しますよね。

大谷秀和:いやー、監督になるとかはまだ全然想像してないです。僕、冒険したり勢いで何かに向かって走っていくみたいなタイプじゃないので。ただ「監督やりたい!」と思った時の為にもライセンスの取得含めしっかり準備はしていくつもりです。

とにかく一回やってみるんです。

―こんなに1つのクラブから強く求められることってなかなか無いと思うのですが、話しは現役時代に戻ってどんなことを考えたり実践してましたか?求められ続ける為に。

大谷秀和:基本的なことですけどオフだからっていつもは食べないジャンクなものを食べるとかは無かったです。大人ですから同僚や友人達とお酒を嗜むことは勿論ありましたけど、浴びるほど呑むようなことはしませんでした。リーグを戦っている時とあまり生活を変えませんでしたね。他人は良いんですよ、もちろん。けど僕はやらなかった。

 

―練習や試合ではどうですか??

大谷秀和:試合は当たり前ですけど練習でも抜かなかったです。自分の中に決意があったから。ダッシュ1つとっても最後まで走り切るのか、途中抜くのか。ゴムチューブを使ったトレーニングでも他の選手より1回2回は多くやりました。その積み上げだと思っていたので。僕は身体能力が高い選手では無かったから、日々の積み上げと監督に求められていることが何かを理解することに拘ってましたね。

―ストイックだしエゴが無い。

大谷秀和:試合でどの選手をどう使うかは監督が決めることじゃないですか?クラブが上手くいかない時に責任を取るのも監督。だとしたら選手の僕は練習の段階からとにかく監督が求めていることをよく理解してピッチで実行すること。「大谷が居るから安心できる」って、そう思ってもらう為には練習の時、試合の時、監督が求めることをよく理解して、自分が何をしなければいけないかを考えて実行しなきゃいけない。試合に出続けることができた大きな要因です。だから僕、どの監督とも衝突したりしたことは無いんですよ。

―多くの選手は周りが自分の合わせてほしいと思っているのではないでしょうか。
特に海外でプレーにするには自己主張が強くないと通用しないと聞きます。

大谷秀和:ピッチで実際に戦っている選手は勿論、監督のことも当然リスペクトしてる。

「俺はこうしたい」っていうのはリスペクトに欠けると思うんです。監督が変わると練習も試合での戦術も変わりますよね。けど、とにかく一回やってみるんです。鈴木大輔(現・千葉キャプテンでTHINETのブランドサンバサダー)とは同じクラブで4シーズンほどプレーしましたけどアイツも同じメンタリティーでしたね。それが出来るか出来ないかの差って結構大きいですよ。扱いにくい選手にはなりたくなかった。

“視えてない”っていう状況は無いです。

―ピッチ上で、他の10人の選手に対しても同じようなスタンスですか?

大谷秀和:さっきも似たようなことお話ししたんですけど、自分がピッチに立てば皆が安心してくれる。まずはそれを心掛けてましたね。プレースタイルもポジションも「俺が俺が」っていう感じじゃないですし。自分がどういうプレーをしたいかはあまり重要ではなくて。

―ちなみに現役時代のご自身はどんな選手だったと感じますか?客観的に見て。

大谷秀和:試合中、あんまりボール見てなかったですね(笑)。もちろん間接視野では見てますし、1対1の局面では目の前のプレーにフォーカスします。けど無我夢中でプレーすることも無く。。。良くも悪くも。試合中に何してるかって、敵味方関係無く選手の会話を聞いていたり、相手チームの監督の表情を見たり。それで「アイツ今日上手くいってないな」とか「相手の監督、焦ってるな」とか、試合の流れを見てましたね。それを踏まえて試合をコントロールする。コントロールしたいんです、とにかく。そういう選手でしたね。

 

―見てる、っていうより視てますね。

大谷秀和:僕みたいに特別な能力を持ってるわけではない選手は、他者より練習するとか、他者より考えるとか、そうでなきゃ生き残れない。監督がどんなチームにしたいのか、どんな戦いかたをしたいのか、チームメイトが気持ちよくプレーする為にどうしたら良いか。自分が何をしなければいけないのか。中学の時から変わらないですね。色んなことそうですけど“視えてない”っていう状況は無いです。

 

―アカデミー時代から現役引退まで、ボールだけではない色んなものを視ていたんですね。

大谷秀和:今でもサッカーは凄く好きですし、これからもきっと関わっていくんだと思います。けどネガティブな意味ではなくて「サッカーが無い生活なんて考えられない」とか、そういう考えではなかったから。だからこそ常に色んなものが視えていたのかもしれません。

Close
Close
Sign in
Close
Cart (0)

お買い物カゴに商品がありません。 お買い物カゴに商品がありません。